もし、あなたが。
月明かりの空の下、不安で眠れない夜があったなら。
ぼくが、ずっと傍にいてあげる。
それが、唯一。
ぼくのできることだと信じてる。
それは、よく晴れた冬の日の出来事。
雪の舞う寒い空の下で、緊迫した空気が流れていた。
「この国を乱すことは、姫であるわたしが許しません。」
国に押し入ってきた反乱者たちに向かって、
少女は怯むことなく、むしろ軽く笑みを浮かべてそう言った。
「討伐が望みなら、どうぞほかの国へ」
「あの、ほかの国におしやってもいろいろと問題が・・・」
「え?なら、そんなことやめてしまいなさい」
思わず口をついた言葉に、
少女は反乱者たちに向かってきっぱりと言い捨てた。
あなたは何者にも恐れない。
その誇りの高さに圧倒されながら。
ぼくはあなたの傍に仕えると決めた。
いつ、どんなときも。
あなたに忠誠を誓い続ける。
「姫様はまたあんな無茶をして!」
こっちの身にもなってくださいっ!
城に帰り着いたと同時に不機嫌丸出しの声を叱りつけると、
少女は不思議そうに目を見開いた。
「あれ、怒ってる?」
「当然です。姫様が反乱者に立ち向かうなんて」
「いけませんか?」
「当たり前です!もし襲ってきたらどうするおつもりだったんですか!?」
「あー、そこまで考えてなかった」
あははー、と軽く笑い飛ばす少女に頭を抱えた。
姫としての自覚がないのか、
それとも正義感がそれよりも上回るのか。
いや、たぶん、先行だな。
「まったく、もうすこし姫であることを自覚をしてください!」
「あはは、ごめんって!でも、さー・・・」
「でも、なんです?」
「もし、そういう危険なことになっても、さ」
「なっても?」
なにか楽しそうに話を切った彼女を
不思議に思い、首を傾げる。
「あなたは護ってくれるのでしょう?」
そう言ってにっこりと、きれいに微笑んだ少女に
思わず目を見開いて面食らう。
「ちがうの?」
「いいえ。必ずお護りします」
「ええ、信じてます」
わたしが恐れることがないのは、
あなたが護ってくれると、信じているから。
微笑んだまま、
そう言った彼女に、どこまでも敵わないと思い知らされる。
でも、そんなあなたたからこそ。
護りたいと、強く思ったんだ。
「王に報告に参りましょう」
「はい、お供しまーす」
「・・・お供するのは、こっちです」
「気にしない気にしないっ」
どんなときも忠誠を誓い、
その笑顔を護り続けると決めた。
たとえ、世界中のものを敵に廻したとしても。
必ずぼくは、
あなたの傍に仕え続ける。
それがぼくにできる、
唯一のことだと、信じている。