そらかげ

の伝説。



水に囲まれた都に伝わる御伽話。
都を護る龍の伝説。




地元の人は信じて疑わない。




湖の中央に浮かぶ祠に、龍が眠っていると。
龍を操る龍使いとともに、都を見守っているのだと、信じている。
でも、引っ越してきたばかりの彼にとっては、ただの噂だった。






彼女と出会うまでは。






祠の屋根に腰掛ける少女を見つけるまでは。
祠は橋も掛かっていない大きな湖に浮かんでいて、
とても泳いでいける距離じゃないし、泳いでいけたとしても屋根になんか登れない。




そんないろいろ不可能な場所に
彼女はいた。




彼女を見つめて動けなくなった自分に、
白いワンピースを着た少女は微笑を浮かべる。












「こんばんは」












水が流れるような、澄んだ声。
その邪気のない、子供のような笑顔に、何故かほっとした。


「見かけない人。お名前は?」
「・・・喜多村、利夕」
「りゅう?セレスと一緒っ!」


屋根の上ではしゃぐ少女に一歩後退さる。
子供のような、というよりほんとに子供なのかもしれない。










「セレス、龍なのっ!利夕と一緒っ」










16歳くらいの少女の嬉しそうな笑顔に、少しだけ呆れる。
なにをやってるんだろ、自分は。
不思議っこに構っていられるほど暇じゃないのに。
湖を囲む手すりに肘を付いて、少女を見上げる。


「龍ねぇ。じゃおまえは龍使いなわけ?」
「そうっ。よくわかったね、利夕」
「ははは・・・付き合ってられません」


乾いた笑みを浮かべて、少女に背を向ける。
龍なんてただの伝説。
龍使いなんて、ただの物語。
おれはそんな御伽話、信じない。








「あ、利夕っ!待って待って」








引き止める声に溜息を吐いて振り返る。
そしてそのままの姿勢で固まった。


「おまっ、飛んで・・・!?」
「龍使いだもんっ、ねーちょっと遊ぼっ!」


宙に浮いたまま少年の腕を引っ張る少女に目を見張る。
自らを龍使いと名乗り、空を飛ぶ少女。








普通なら、逃げ出しても不思議じゃない状況。
この女の子のことを恐がっても、当然。








なのに、自分はわくわくしている。
自然と表情が緩むのが、わかる。










彼女がほんとに龍使いがどうかはわからないけど。
少女は空を飛ぶ異質の存在で。










龍も龍使いも伝説も、信じられない。
でも、関わってみるのもいいかもしれない。








たまには馬鹿みたいなことをしてみても、いいかもしれない。








腕を引っ張る邪気のない笑顔を浮かべる少女を見上げて、
少年は口元を緩めた。










「何して遊ぶ?」










少女の眸は、龍が眠る湖のように青かった。


























<あとがき>
まとまりなくてすいません・・・;
なにが言いたいのかわかんないです;
長編で昔書いていたものを短編に書き直してみたら、こんなことに・・・;;;
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
勉強して出直します(え